冷たい水域と温暖な海:水温が作り出す生態系の魅力

同じ場所、同じポイントでダイビングをしても水中のコンディションはその日によって違ってきます。

ダイビングの最大の魅力のひとつは、様々な水中環境を探検できるという点だと思います。

湖や南国でのダイビングなどそれぞれ特徴があり、天候,気候、季節などが関係し前回とは違った体験ができます。

今回から水中でダイバーに影響を与える6つの環境上のコンディションについてお話します。

冷たい水域と温暖な海、それぞれの水温が織りなす生態系の魅力には、まるでユーモラスな冒険小説が広がっているかのよう。

水温差が生む素敵な海の世界に、ぜひ一度潜り込んでみてください!

水温がダイバーに与える影響

水温はダイビングする場所や季節によって変動し、天候によってもある程度は変わってきます。

水温は北極地方の-2℃の極寒から熱帯地方の30℃以上の暖かいところなど大きな幅があります。

同じ地域内での年間の水温の変化は8℃~11℃くらいです。温帯性気候の場合は冬はドライスーツ、夏はウェットスーツが適しているといえます。

水温は水深によっても変動し、通常は潜降するにつれて水温は下がります。

水は水温ごとの層をつくる傾向があります。

境目が非常にはっきりしているため、穏やかで温かい水の中を泳いでいて、あるラインでヒヤッと冷たく感じる瞬間があります。

これはサーモクラインと呼ばれています。

サーモクラインの上と下の温度には10℃ほどの開きがある場合もあります。夏の暑い日にアスファルトの道路から立ち上る陽炎のように水中でも同じようにゆらゆらとゆがんで見えることもあります。

これは2つの温度層が混ざることによっておこる現象です。

この境目を泳いでいると「あったかい」と「冷たい」という感覚が交互にやってくるので不思議な気持ちになります。

ダイビングするポイントの深度の水温を予習して、ウェットスーツにするか、ドライスーツにするか保温の程度を決める必要があります。

これから潜ってみたいポイントがある人は情報を検索してみると大体の水温など記載されていると思うので参考にしてみてください。

ダイビング中に予想以上に水が冷たく感じてしまっていたら、潜水計画を変更して、もっと浅くて暖かい場所に移動しそこで時間を過ごした方がいいかもしれません。

体温が下がりすぎてしまうと、ハイポサーミアというトラブルの原因になります。

また非常に冷たい水は器材のトラブルにもつながってきます。

北極や南極、日本では北海道の流氷ポイントなど、極寒の海を潜りたい場合は特別な装備と特別なトレーニングが必要になります。

季節ごとの水温の変化

ここでは四季ごとの水温と水温変化のイメージをお伝えします。

ただしこれは地域や気象条件によって実際の水温は異なります。

実際の具体的な水温情報は、潜水や水上アクティビティを行う際に現地当日の情報を確認しましょう。

  1. 春(3月から5月):
    • 春になると、冬の寒冷な水温から上昇し始めます。初春はまだ冷たいことがありますが、日が長くなり気温が上昇するにつれて、海の水温も徐々に上昇します。春の初めは特に寒冷な地域ではまだ防寒対策が必要ですが、季節が進むにつれて快適な水温になります。摂氏5度から15度程度の範囲で変動することがあります。温暖な地域では15度から25度程度まで上昇することがあります。
  2. 夏(6月から8月):
    • 夏は一般的に最も温かい季節で、海の水温も最高になります。熱帯地域や温暖な地中海の海域では特に高温になり、水中でのアクティビティが楽しめる季節です。寒冷な地域では摂氏15度から20度以上に上昇し、温暖な地域では20度から30度以上にまで上昇することがあります。特に熱帯地域では30度を超えることが一般的です。
  3. 秋(9月から11月):
    • 秋になると、夏の高水温から徐々に下がり始めます。初秋はまだ温かいですが、季節が進むにつれて涼しくなります。秋の終わりには冷たくなり、冬に向けての準備が始まります。秋は快適な水温で潜水や水上スポーツを楽しむのに適しています。寒冷な地域では水温が摂氏10度から15度まで下がり、温暖な地域では15度から25度程度まで下がることがあります。
  4. 冬(12月から2月):
    • 冬は寒冷な季節で、海の水温も最も低くなります。特に寒冷な地域では氷が形成されることがあります。冬は水中でのアクティビティが難しくなるため、潜水者やサーファーは寒冷な水温に対応するための厚手のウェットスーツやドライスーツを使用することが一般的です。寒冷な地域では水温が摂氏0度から10度以下に下がることがあり、温暖な地域でも10度から20度以下に下がることがあります。氷海が広がることもある寒冷な地域では、水温が氷点下になることもあります。

温暖な海域の生態系

熱帯地域の海域では美しい水中生態系が形成されています。

  1. サンゴ礁:
    • 熱帯地域の海域では、美しいサンゴ礁が見られます。サンゴ礁は多くの種類のサンゴポリプやサンゴのカンアリ、多彩なサンゴの生態系で構成されています。これらの生態系は多くの海洋生物にとっての生息地であり、豊富な生物多様性が見られます。
  2. 熱帯魚:
    • カラフルで多様な熱帯魚が熱帯地域の海域に生息しています。美しい色彩や奇抜な形状を持つ魚類が豊富で、潜水者やスノーケラーにとって観察の対象となります。
  3. 海洋哺乳類:
    • 熱帯地域の海域には、イルカやクジラなどの海洋哺乳類も見られます。これらの動物は通年を通して温暖な水域を好むことがあり、観光地としても人気があります。
  4. ウミガメ:
    • カメの仲間であるウミガメも熱帯地域の海域でよく見られます。繁殖地や営巣地として有名な場所も多く、保護活動も行われています。
  5. サメ:
    • サメも熱帯地域の海域に生息しています。異なる種類のサメが見られ、特にサンゴ礁周辺ではさまざまなサメが観察されます。
  6. 海草と海洋植物:
    • 温暖な水温が続くことで、海草や海洋植物が繁茂します。これらは海洋生態系においても重要な要素であり、小魚や甲殻類などがこれらの植物を利用しています。

寒冷な海域の生態系

寒冷な海域の生態系は、低温の海水がもたらす独自の環境条件に適応した生物が豊富に存在しています。

  1. アルギン藻類や氷藻:
    • 氷の下では、氷の結晶に引っかかりながら成長するアルギン藻類や氷藻が見られます。これらの藻類は氷の下に独自の生態系を形成し、小型の生物がこれを摂食することがあります。
  2. アザラシやペンギン:
    • 南極圏にはアザラシやペンギンなどが生息しています。これらの動物は氷や寒冷な海域に適応し、氷上で営巣することがあります。
  3. クジラ:
    • 寒冷な海域には多くのクジラが生息しています。これらのクジラは冷たい水域を好み、冷たい水域に豊富に存在するプランクトンや魚を摂取します。
  4. 冷水性魚:
    • 寒冷な海域には冷水性の魚が多く生息しています。例えば、北極圏ではアトランティック・ソメイやアルキダイなどが見られ、南極圏ではナンキョクソウダ、アイソソウダ、クラーケンフィッシュなどが生息しています。
  5. 海鳥:
    • 寒冷な海域には多くの海鳥も見られます。例えば、ペトレルやアホウドリなどが氷上で営巣し、冷たい海域で生息します。
  6. 海氷生態系:
    • 寒冷な海域では、氷上や氷下での生態系も重要です。氷の下では氷藻や周辺の水域からもたらされるプランクトンや、クリプトビオータ(cryptobenthic)と呼ばれる微小な底生生物が生息しています。これらは氷の下や海底に潜んで生活し、氷下の環境に適応しています。特有の生態系が形成され、それに適応した生物が生息しています。

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