残圧、寒さ、疲労のほかに水中にいられる時間を制限する要因があります。
それはダイビング中に窒素ガスが身体の細胞に溶け込むことです。これは水中で圧力を受けた状態で空気を呼吸することで起こります。
ダイビング中は圧力の増加に伴って空気に含まれる窒素が身体の細胞に溶け込みます。
窒素の量は主にダイビングの時間と深さによって変わります。より深く、長くダイビングをするほど窒素の溶け込む量が多くなります。
私たちの身体は窒素を必要としないので、溶け込んだ窒素は身体の外へ排出しなければなりません。
深い深度から浮上してくるときは圧力が減少するので窒素は溶け込んだ状態を維持できなくなり少しずつ身体から排出され始めます。余分な窒素も限度内の量なら、身体から問題なく排出されます。
しかしこの限度を超えてダイビングをしてしまうと、身体がたくさんの窒素を吸収しているために、窒素が細胞から溶け出す速度が、身体の外へ排出する速度を上回ってしまいます。
窒素は細胞から溶け出す時に血管や細胞の中に気泡を作ります。
この気泡こそが減圧症またはベンズと呼ばれる原因となります。
減圧症の兆候と症状
気泡は身体の様々な場所で形成されるため症状も様々です。
マヒ、ショック、ヒリヒリ感、脱力感、めまい、しびれ、呼吸困難、間接や手足の痛みなどがあります。重症の場合は意識不明、最悪の場合は死に至ることもあります。
減圧症とすぐにわからないような現われ方をする場合もあります。
軽度から中程度のヒリヒリ感やしびれなどで間接や手足に限りません。
様々な症状が一度にでることもあれば、別々にでることもあります。
通常症状はダイビング後15分から12時間以内にでるといわれていますが、それよりあとになってからでることもあります。
手当てと治療
ダイバーに減圧症の症状がみられるか、その疑いがある場合はすぐにダイビングを中止して、ダイビングの医学に詳しい医師の診察を受けなければなりません。
減圧症の手当てではまずダイバーを寝かえせて酸素を呼吸させます。最寄りの救急医療機関やダイバー専用の緊急サービス、あるいは再圧チャンバーに連絡します。
呼吸をしていなければ人工呼吸が必要で、脈がなければ心肺蘇生法を行う必要があります。
再圧チャンバー治療とはダイバーに圧力をかけ再溶解させ身体が細胞内に形成された気泡を吸収できるようにする方法です。
減圧症はダイバーにとって重大な症状ですがインストラクターやガイドに従って余裕のあるダイビングをしていればほぼ心配することはありません。